国土交通省によると、全国の空き家の総数は2018年時点で850万戸弱、20年前に比べると、その数はなんと1.5倍になっています。賃貸用または売却用などの住宅を除いた数は349万戸、こちらはこの20年で1.9倍に。なお、349万戸のうち一軒家(木造)は240万戸にもおよびます。
この数字でもわかるように、年々空き家は増加しています。しかも建物が建ってさえいれば土地の固定資産税は軽減されるため、住んでいる人が居なくてもそのまま建物さえ残しておけばいい、と考えてしまう所有者が後を絶ちません。
こういった問題の対策として、まずしっかりと管理の行き届いていない建物を減らそうという観点から「空き家対策特別措置法」という法律ができました。
今回はほかにも、相続の際にもかかわりがある、空き家にまつわる税金と法律のお話をしていきます。
空き家対策特別措置法
しかし、平成27年に「空き家対策特別措置法」というものが施行され、特定の空き家に対しては住宅用地の特例が適用されなくなりました。
では、実際にどのような建物に対してそのような措置が取られるのでしょうか
建物が保安上危険となる恐れがある
建物が何らかの事由で破損していたり、傾いていたりするなどの場合は、特定空き家に指定される可能性があります。
現状のまま放置することで衛生上有害となる恐れがある
草木が生い茂ってしまい、管理がなされていない、ごみが放置されているなど、悪臭や害虫の発生がある場合は特定空き家に指定される可能性があります。
特定の管理がされていなくて、景観を損なっている
地域で定められた景観保全に関するルールが守れていない、多数のガラスなどの破損が見られ放置されている。そういった場合も特定空き家に指定される場合があります。
周辺の生活環境の保全が保たれていない
立木の枝が道路にはみ出していて、歩行者や車の通行の妨げになっている、動物などが棲みついてしまい、悪臭や騒音などの影響が出ているという場合も、特定空き家に指定されてしまう可能性があります。
空き家対策特別措置法の特定空き家に指定された場合
特定空き家に指定されてしまうと、事実確認のため自治体による立ち入り検査が実施され、「指導」が行われます。
その指導によって改善ができれば特定空き家の指定を解除することはできますが、改善されずにそのまま「勧告」を受けてしまうと住宅用地の特例が適応されなくなり、土地の固定資産税の納付額が更地と同等になってしまいます。
そればかりか、立ち入りを拒否したり、行政の勧告を無視したり、といった悪質な行為をすると、罰金を受けることにもなります。
さらには、期限内に行政の勧告等に関しての改善がなされなければ、強制的に行政によって解体されることもあります。その場合、当然解体費用は空き家の所有者が支払うことになりますが、たいてい個人で解体業者を探して依頼するより高くついてしまうことでしょう。
固定資産税
土地や建物を所有していると、固定資産税が課税されます。固定資産税は各行政が定める課税基準に基づいて計算されて、毎年1月1日時点の所有者へ納付通知書が郵送されます。
場所や地域によっては都市計画税も課税されるところがあります。
ちなみに土地の固定資産税の金額計算方法は、当該地に建物があるかないかで大きく異なります。
土地の固定資産税には「住宅用地の特例」というものがあり、当該地に建物が建っていると200平方メートルまで固定資産税を(小規模住宅用地に該当)1/6に軽減、200平方メートルを超えた部分についても(一般住宅用地に該当)1/3に軽減されます。
固定資産税(土地・建物なし)
当該地に建物がなく、更地の場合。固定資産税の課税評価額かける1.4パーセントで計算。
たとえば、土地300平方メートル・課税評価額3,000万円の場合、3,000万円かける1.4パーセントで42万円となります。
固定資産税(土地・建物あり)
当該地に建物が建っている場合、200平方メートルまでの固定資産税が1/6に、200平方メートルを超えた部分についても1/3にそれぞれ軽減されます。
たとえば、土地350平方メートルで課税評価額3,000万円の場合。
この土地の小規模住宅用地に該当分の200平方メートルの固定資産税(1/6に軽減分)の計算は、3,000万わる350平方メートルかける200平方メートルわる6かける0.014で4万円。
この土地の残りの一般住宅用地に該当分150平方メートルの固定資産税(1/3に軽減分)の計算は、3,000万わる300平方メートルかける100平方メートルわる3かける0.014で5,4万円。
したがって、この土地の固定資産税は9.4万円となります。
空き家に掛かる税金
マイホームと同様に、空き家にも当然ながら固定資産税1.4パーセント、場合によっては都市計画税0.3パーセントがそれぞれかかります。
土地の場合、固定資産税の課税評価額が30万円を超えない場合は課税されません。建物に関しても20万円を超えないのであれば課税されません。
空き家に掛かる税金の納付期限と納付者
空き家を所有している場合、登記の有無に関係なく、その年の1月1日時点の意不動産(空き家)の所有者へ納税通知書が郵送されます。
納税通知書を受けたにもかかわらず税金を納めなかった場合は、納税義務者の口座等の資産が差し押さえられて、強制的に徴収されてしまう可能性もあります。
※マイホームと同様です。
その他の減税
譲渡による所得税
空き家となったマイホームを売却した場合、空き家になった日から起算し3年を経過する日が属する年の12月31日までに譲渡していれば、3,000万円を上限に所得税が控除されます。
そのため、不動産の売却を検討している場合には、この期間中に売却されることをおすすめします。
※また居住していたマイホームが空き家になった後に建物を解体した場合には、上記要件に加えて解体から1年以内に譲渡契約を締結すること及び駐車場等業務の用に供していないことが必要となりますので、注意が必要です。
一方で、これまでは親などから相続した家(元実家など)を売却した場合は、相続人はそこに居住していなければ、控除を受けることができませんでした。しかし平成28年度の税制改正により、「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」が創立され、この特例によって、一定の要件を満たすことで、相続した空き家の譲渡所得、3,000万円を上限に特別控除の適用を受けることが可能になりました。
また、その相続に伴い相続税が発生した場合、こちらも一定の条件を満たすことで相続税のうち一定の金額を譲渡資産の取得費に加算することができるため、譲渡所得にかかる所得税や住民税を減少させることができます。
なお、マンションなどの区分所有家屋には、この特別控除が適用されないため、親のマイホームを相続した相続人がその不動産を売却した場合は、相続人はそこに居住していなければ3000万円を上限とした控除の特例の適用を受けることができません。
しかし、その相続に伴い相続税が発生した場合には、当該売却不動産に課税された相続税相当額は譲渡所得の計算上取得費(不動産の購入金額)に加算をして計算することができます。いつ、誰が売却することが税務上有利なのか、複数の選択肢があるため注意が必要です。
まとめ
すぐに売却や解体を決断できない事由がある場合でも、空き家となってしまっている建物は、特定空き家などに指定されないように適切な管理を行っておく必要があります。
前項でもお話しましたが、万が一行政からの助言、指導を受けることになった場合は、速やかに対応し、適切な状態に改善する必要があります。空き家が離れている場所にある、自分で管理することが難しいなどの場合は、専門の業者に依頼し管理をしてもらうといった方法を取ることを検討するのもいいでしょう。